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5極管、8295を使用した1KW3段リニアーアンプ(入力100mW)

現用リニアーアンプ、かつてのアメリカ軍用送信機です。RFデッキの2つの角形メーターは新規に発注したものです。
オリジナルの丸型が不良となった為に交換しています。中段が中圧電源回路、一番下が3KV高圧電源回路です。

   
 

下の3枚の写真、左はヤンガーステージ5763と6146Bの初段と2段目、中はそのシャーシー裏面、右はアンプ1KW出力時の
モニター受信機のオーディオ信号出力をFFT解析したものです。他の項目で紹介したPSNジェネレータの状態変数型低周波
2トーン発振機からPSN方式のジェネレータを通り、3.5MHz帯の100mWを入力しています。
IMDは3次で50dB以上(?)の特性が得られています。50Ωダミーロードに1KW出力でのデータです。

     

最上段RFデッキの回路図面です。オリジナルは6146Bではなく6146でした。また原回路にはスタンバイ回路やALC回路はなく
追加しています。2〜30MHzの任意周波数を出力出来るアンプで広範囲をカバーする為上段の写真のごとくコイル類をロータリー
スイッチで切り替えています。それを記入すると図面が複雑になるため、シンプルなモノバンド用として書きおろしています。

500V、255Vの中圧電源回路は定電圧放電管OA2,OB2と6336Aによる安定化電源、-200Vはモトローラツェナーダイオード(50M200ZR5)
による安定化電源、3KVはオリジナルは水銀整流管872Aによる両派整流でしたがダイオードに変更しています。

送信電波のモニター回路

自局が発信した電波をモニターする場合、単に受信機のアンテナ入力をオープンにしただけでは信号が強すぎたり電源ラインからの
ハムを拾ったり、いろいろと問題を起こします。数十センチの微少アンテナ(ぶらぶらアンテナ)からのstray waveを入力するのはNGで、
パワーアンプから出力された正規の高周波を捕えるため、アンテナへの同軸ケーブルから拾うのが本来の接続方法です。
原理はシンプルで、入力点はリニアーアンプから出た直後の端子とモニター受信機が直接の入出力関係になっていること、
それにこの系が(一般的には)50Ωラインで繋がれていることです。トロイダルコアを使った回路としては、
同軸ケーブルをトロイダルコアを貫通させたワンターンの一次側とし、二次側は10ターン巻けば-20dBのピックアップコイルと
なります。(20回巻いても-26dBにしかならないので巻きすぎるのは無駄というものです。)
送信電波のごく一部を受け取る接続なので厳密なコアーの選定は不要ですが、通す同軸ケーブルの太さも考慮し、
透磁率の大きな、FT-82-72、FT-82-43とか、FT-50-72、FT-50-43などが適当ではないかと思います。
ピックアップコイルから直に受ける51Ωは、アンプのパワーにもよりますが、1〜5W程度が要るでしょう。
5KΩの可変抵抗器は受信機のSメーターが9+30dB程度の強度になるよう調節します。フロートバランは所謂コモンモードフィルター
としての作用をさせます。右図は「山村秀穂氏著、トロイダルコア活用百科」p404から拝借しました。ファラデーシールドを施しています。
M型コネクター3個で結線しているようですが、RXに向かうピックアップ回路はアースから浮いた絶縁タイプのBNCがいいかと思います。

   

2番目はコンデンサーによるC分割で同軸ケーブルの高周波電圧の一部をピックアップする方法です。数pFの高耐圧のコンデンサーが
必要になります。設定の仕方はトロイダルコアを使用した場合とほぼ同じです。実際に設置したわたしの例ですが、大和のSWRメーター
の中に8.2pF、5KVのセラミックコンデンサと2000pFのマイカコンデンサで分割しています。出力は絶縁型のRCAコネクターで受信機に
つながります。

このモニター回路を有効なものにするには通常、受信機の入力端子が二つ必要になります。通常の受信時ははアンテナと直結した
回路で、送信時はこのモニターラインで繋がる必要があります。アンテナ端子が一つしかない場合は必要に応じてリレーなどでこの
状態を切り替える必要が生じます。トロイダルコアーによるワンターンピックアップ回路にしろ、C分割によるピックアップ回路にしろ
最終の発射電波を直接とらえているので、電源リップルが乗った、あるいは色々な非直線素子によるひずみを含んだ
”幽霊電波”ではなくなります。

CD78-L用アンテナカプラー

自作ではありません。クリエートの「CD78−L」用のアンテナカプラーの一式です。興味のある方は拡大してご覧ください。
今のところ、製作者の了解を得ていませんので入手方法・値段などは記述できません。かなりしっかりした作りになっています。
モーターは50V仕様、コイルに被せる形の金属円筒その他の部品は真鍮製です。3.5-3.8MHzでSWRはほぼ 1.0 に収まります。

右のコントローラーはAC100Vに接続。中央のLED表示はコイルの位置を表示、モーターのスピードは速い・遅いの切り替えがあります。

nanoVNAを使用してこのカプラーのSWRなどのデータを表示します。

アンテナはクリエイトの「CD78L」です。上記カプラーでマッチング調整、 まず
3.8MHzセンターで測定したnanoVNA本体の画面です。スミスチャートやSWRのデータは表示され、
SWR 1.06 は読めますが本体のままでは画面が小さく、データの表示も少なく若干不満の残るところです。アンテナの調整などで野外
での計測では周囲の明るさのため見づらくなります。アプリケーションをインストールしてPC上で観察するとこの辺の不満が
解消されより詳しいデータを得ることができます。「1:3.800 000 MHz」とありますが、これは「1」と表示した逆三角形のカーソルを
指していてちょうど画面の中央で黄色の SWR ではグラフ底にくっつくように、またスミスチャートでは一番大きな円のど真ん中にあり
ここが50Ωの位置なので、ここにも1番のカーソルがあることはスミスチャート上も実数で50Ω、虚数部分はなし、と読み取れます。

以下3つの写真がPC (windows10) 上での解析データです。
それぞれ下側バンドエッジの3.500MHz、バンドの真ん中に近い3.600MHz、上側バンドエッジの3.800MHzの
データです。表示文字が少々小さいのでクリックすれば拡大します。赤いカーソルが評価している周波数で3.5MHz(近似的)です。
スミスチャートでは50Ωの実数点にVSWRではほぼ1.0の値に、リターンロスでは-40dB少しなどが読み取れます。

3.500MHz

3.600MHz

すぐ上はほぼバンド中心に近い3.6MHz(正確にはマーカー位置は 3.59935Hz)のデータですが、VSWR = 1.001、
リターンロス = -64.191dBを読み取れます。スミスチャートでは 50-j57mΩ、実数は50Ωですが若干「-j」パートに位置して
capacitiveな領域に位置しています。下段右側の「R+jX(Ω)」のグラフ X を表す黄色のカーブは3.6MHzにおいて 5 と -5 の中間に
位置していて inductive なのか capacitiveな領域なの分かりにくいですが、-j57mΩで「南半球」-jパートに位置します。
とは言っても -j57mΩ では無しに等しく、実質は L 成分も C 成分もなく純抵抗成分のみと考えてOKで、言い換えれば
ダミーロードを繋いだのと同じ状態かと考えられる。それもそのはず、S11 |Z| のグラフでは √R2+X2 = 50 を示していています。
( 57mΩは二乗しても無視出来る値です。)
結論的には、アンテナの状態は実数値の50Ωに近く虚数部分は無視できるほど程小さくきちんと整合されています。

3.800MHz

3.8MHzでは上2例と異なり、スミスチャートの動線が +j パートから -j パートの経過で実数軸を横切っていることです。
S11 |Z| の形も上二つと異なります。上二つは直列共振ながら、ここ3.8MHzでは並列共振になっている証です。
VSWR やリターンロスに関しては他の周波数と同じく問題無い程度に整合されています。
以上、アンテナカプラーで調整をおこなえば3.6MHz帯前後 300KHz の範囲ほぼ全域で SWR 1.0 に調整できることを示しました。

簡単なLCR回路をnanoVNAで解析してみました。

何を遊んでるんだ?とお叱りを受けそうな実験ですがnanoVNAがアンテナ調整だけでなく高周波領域の色々なデータを提供して
くれることを示したかったのでアップロードしました。テストした回路が左側、実際の回路は右の写真です。Lは2.2uの色が付いて
いますが実測は1.95uHでした。Cにしても多少の誤差は承知の内です。nanoVNAを使って回路図の X1 と X2 の間のインピーダンス
を計測する訳ですが、何処からかインピーダンスブリッジを持ってこなくても、この小さなセット一台で十分な特性を得ることができます。
周波数を1MHzから100MHzまでスキャンさせ、その間のインピーダンス変化をnanoVNAを経由してパソコン上で観察してみます。

   

グラフはクリックし拡大してご覧ください。
主として観察するのはスミスチャートです。1MHzのときは「A」点で、そこから始まり、周波数の増加と共に時計回り(大きな矢印の方向)
に実数軸を3回横切って最終的に「B」点の100MHzのところに到達します。
スミスチャートに慣れておられるOMには釈迦に説法で恐縮しますが、実数軸を通過する仕方で直列共振か並列共振かが分かります。
-j パート(容量性部分、南半球)から +j パート(誘導制部分、北半球)へつまりは下から上に実数軸を突き上げる点が直列共振点です。
1MHzから徐々に周波数を高くしていく一番近いところは緑色のカーソルがある点 3.946MHz が最初の直列共振点になります。
以降は+j パート、所謂 inductive なパートを通過して、今度は実数軸を+j パートから -j パート、上から下に飛び降りるように通過する
点は並列共振点で 9.446MHz になります。
さらに -j パートを旅して再び実数軸を突き上げる直列共振点が 40.089MHz になります。nanoVNAを操作してこのRLC回路には2個の
直列共振点と1個の並列共振点があることが分かりました。

上段真ん中の「S11 R+jX(Ω)」のグラフは実数値と虚数値を示しています。黄色の曲線が虚数部分の値で、少し見にくいですが
共振している3点は +5 と -5 の中間点にあり、 jX の X はほぼゼロということになります。次に、50Ω系ではないのでVSWRはさておき
「S11 Real/Imaginary」のグラフでも虚数を示す黄色の曲線は緑、赤、青のカーソルがある各共振点において虚数値はゼロであることを
表しています。j パートの値ががゼロであることは共振点であることの裏返しでもあります。
最後のグラフ「S11 |Z|」は実数と虚数の値をベクトル的に合成した数値√R2+X2です。
面白いことに、|Z|絶対値のグラフはいつも直列共振点は下に膨らんだ「谷」の底辺に位置し
並列共振点では上に凸の「山」の頂上に位置しています。
詳細な値はMarker1からMarker3の項目に表示されているので拡大してご覧下さい。まだまだ色々なことにnanoVNAが応用できると思います。

電波のクオリティ評価するツール、FFTアナライザーをPCで表示する

FFTアナライザとは取得した信号や波形の周波数分布を高速フーリエ変換によって周波数ドメインで表示する計測器です。
簡単に言ってしまえば低周波領域においてスペクトルアナライザーのように横軸に周波数、縦軸に強度を示します。
パソコン上で実際にFFTアナライザーがどのように表示されるかを写真で示した方が分かりやすいと思うので私自身の
ツートーンソースで実例を表示します。
まず、旧来の本格的FFTアナライザー( ONOSOKKI CF-360  左写真)を使用して送信機のファイナルアンプからダミーロードに
出力したツートーン信号の解析です。中央が自作のオールパスPSNを使用したジェネレータの100mW信号をリニアーアンプに入力、
右はSDR-3からの100mWをリニアーアンプに入力しダミーロードで終端した最終信号です。
モニター用自作受信機のAF出力からオーディオ信号を取り出しFFTに接続します。両者とも、リニアーアンプはこの上の項目にある
3ステージの真空管アンプを使用しています。
結果1KW出力時、アナログPSNのジェネレーターでIMD 3次が約-55dB以上、デジタルのSDR-3で-45dB程度です。

     

FFT Wave というソフトを利用して、同じセッティングをパソコンに表示させると、
左がアナログPSNジェネレーターの、中央はSDR-3の、右は図中にあるようにメーカー製のツートーン発信器からFFTアナライザー
に入力したものです。設定は共用のAF2トーンソースから、自作ジェネレーターあるいはSDR-3を経由して上記のリニアーアンプを
フルゲインで動作させ50Ωダミーロードに出力し(1KW)、このRF信号を JRC NRD-535 でモニター回路を通して受信、PSN検波回路
でAF信号を出力してFFTに供給します。なお受信周波数は1.9KHzアッパーサイド側にずらして逆サイドの状態も観察できるように
しています。(2KHzずらすとキャリアーの位置が縦軸線と一致して見にくいので100Hzスウェーしています。)

     

これだけの性能がでるFFTが安価なシェアーウェアーで入手できるのは我々無銭家にはとっても有難いことです。
プロが使う本格的な機械としてのFFTアナライザーを購入するとなれば数十万円は下らないでしょう。このソフトウェアーを手
に入れるにはwebの検索サイトで「FFT Wave」を検索して 「FFT Wave Ver.8.4」をダウンロードしてください。
次のアドレスからも到達可能だと思います。
https://www.vector.co.jp/soft/winnt/art/se072391.html

     

「FFT Wave 」のセッティングはこれらの写真のようにすれば先ほどご覧いただいた特性が見られます。PCのマイク入力端子からの
信号入力でも良いかと思いますが、出来れば右写真のような 「USB ライン入力」のアダプターを付けて FFT アナライザーに入力した
方がダイナミックレンジが広くなると思います。USBインプットが可能なら真ん中の写真のように「 USB PnP Audio Device 」を選べます。
右の写真は amazon から購入した USBオーディオキャプチャーケーブルです。RCAピンジャックでもミニヘッドフォン端子でも
接続出来るので便利です。付属のCDロムでUSBドライバーをインストールします。
受信機のヘッドフォン端子からAF信号を取り出し、このシステムに入力します。これで相手の信号の帯域幅や音声の周波数特性が
耳感ではなく視覚での解析が出来るようになります。ツートーンを出してもらえれば奇数次混変調ひずみも一目瞭然に判明します。
受信機の帯域幅を広く出来る装置なら(455KHzでAM用の6KHzフィルターが入っているような場合)、
受信周波数をずらして、例えば3550KHz のLSBを受信中にダイアルを 3551KHz にずらしFFT の周波数範囲を 0-6KHzにすれば
0-1KHzの範囲のFFT画面に相手LSBの0Hz〜1KHzの逆サイド漏れ、FFT画面の1KHzちょうどに相手のキャリアー信号の漏れ、
1-6KHzの範囲に相手のLSB信号の0Hz〜5KHzの信号のスペクトルが表示されます。
通常のQSOをしながら、相手信号に関して、「逆サイド漏れが目立ちますね!」、「キャリアー漏れを見つけました。」、
「帯域幅が4KHzもありますね。」など色々なレポートが可能になります。2トーンを出してもらえれば奇数次混変調ひずみも一瞬で
数値化してレポート出来ます。もちろん自身の電波のモニターでも同じように電波の質の解析が出来ることは言うまでもありません。
結論的に、受信機の性能(IMD特性や帯域幅)によりけりですがかなり危険な(?)監視屋の機能を持たせることになりそうです。